人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ねこでこ茶屋 


歌舞伎と着物とイチローと・・・etc
by nekodeko2

2009年1月28日(水)

東銀座駅の細く長く暗い急な階段をゼイゼイ言いながら上がると・・・
うわっと迫り来る豪奢な桃山風の建物。
そこだけ、切り取ったような別世界。
一気に江戸の世界へタイムスリップ・・・

この感覚って
おいしい贅沢なフルコースをいただく前に
さらにおいしさを引き立ててくれる絶妙な食前酒を飲むようなものかしらん。
程よく喉と胃と頭をアルコールが覚醒してくれて
五感がパアッと解放されて
さあ、メーンはいったいどんな素晴らしいものが出てくるのかしらと
ウキウキしながら待つ・・・そんな感じ。

だから
歌舞伎座という建物は、単なる建築物じゃいけないと思うの。
今に生きる現代人を、いっきに江戸の世界へいざなう
いわゆる前座やセレモニーの演出装置として
大切な役目を担ってると思うの。

2009年1月28日(水)_e0152142_10442418.jpg


今回報道された新歌舞伎座のイメージ画。
世界を股に掛ける隈研吾氏のデザインなんだそうで。
ええ、きっとこれが最新でモダンでおしゃれ~~なんでしょうよ。
古いものと新しいものとの融合とでも?ふーーーん!

でも
私は見た瞬間、ちょっとゾッとしちゃった。
なんか、まるで映画やSF小説に出てくる世紀末の
歴史文化財や重要文化財の行く末の一端を見ちゃったような。
もしくは、どこぞの「なんちゃって」風の新興宗教団体の建物のような。
今では、東京のいたるところに乱立する無味で冷たく寂しい外観。
中途半端な「歌舞伎風」も、何だかかえって、もの哀しさが漂ってる。

歌舞伎座、装飾を抑え現代風に 建て替え計画案提出
新歌舞伎座は29階建て 唐破風の外観はそのままに

都知事さん、相変わらず不遜なご発言。
歌舞伎座も銭湯の多くも同じ唐破風だったりしますが、はい、それが何か?
これ、寺社建築などにも多く使われてる堂々たる日本建築の形ですよ。
それを真っ向から否定なさるというか、見下すというか・・・
この方、もしかして日本の文化や建造物に詳しくない?
銭湯にも歌舞伎座にも行ったことがないのかもね。

「オペラ座風」って・・・意味がよくわからないのですが
どうやら建築に詳しい方たちのブログを見てみると
新しい歌舞伎座の窓の長細い形が
オペラ座の縦ラインを強調したデザインに近いのかなあと。
でも、どうして「オペラ座風」にしたいのか、その都知事の考えが見えてこない。
というか。
都は金出さないんでしょ。だったら余計な口も出すなっつーの。

それから、歌舞伎ギャラリーっていうのは、私はいらないと思う。
歌舞伎はやはり「体感してこそナンボ」だと思うから。私の経験からそう思う。
ガラス張りの向こうからちょっとだけ見て、金取るぐらいなら
芝居がちゃんと観られる安い幕見の席を整備したほうがずっといい。
外国人向けの庭園だとかなんだとかも今はいらん。
そりゃ、いろいろ付属施設があれば、それはそれでいいにこしたことはないけど
今はそれより、
まずは後世に胸を張って残せるような外観づくりにお金を回してほしい。
目の前の小手先の金もうけばかり考えないで、お願いだから頑張ってよ、松竹さん。

このニュースに対して、フジの「スーパーニュース」で
太郎サンが、いいことおっしゃってました。

「今の歌舞伎座の良さは、あの外観を見ただけで、中のざわめきとか
にぎやかな感じが伝わってくること。例えば同じ歌舞伎公演でも、
国立劇場のあの冷たい外観からは、中のにぎやかさは全く伝わってこない。
新しい歌舞伎座にも、そういうものが伝わってくるというのが大事なのではないかと」

それから、中村勘三郎さんもコメントを。

「味はうまいけど古くて汚い食堂が
新しく綺麗になったとたんに味が落ちちゃうような
そんなふうにはなってほしくないよね」

勘三郎さんのおっしゃる「味」とは、歌舞伎そのものというより、
そこにかけられるスパイス・・・つまり歌舞伎座のデザインが悪くなれば
それが歌舞伎見物全体の印象を落としてしまうということだと思います。

先日フジで放映された勘三郎さんの特集番組でも
ルーマニアの公演でイヤホンガイドがうまく観客に行き渡らなくて
勘三郎さんが激怒するシーンがありました。
ナレーションでは「芝居そのもので勝負するしかなかった」と言ってましたけど
もちろん、どんな状況であろうと彼らが芝居の質を変えることはないと思います。
でも、ちょっとしたスパイス、つまり効果や演出を添えることで
観客だけでなく、役者さん自身がさらに気持ちよく演技できる環境って
すごく大切なことなんじゃないかな。
あの浅草歌舞伎でも、忠臣蔵の大序のシーンを
観客席の後方の暗幕からこっそりと覗いていた仁左衛門さん。
いたずらっぽい、嬉しそうな横顔。
江戸の芝居小屋にタイムスリップした実感を、役者自身が楽しんでいたことが
私はとってもとっても、嬉しかったな。
ああ、役者も一緒に体感してるんだって。

日本の大事な文化財を継承していくことはもちろん。
歌舞伎ファンや建築ファンにとってももちろん。
だけど最終的には、
歌舞伎そのものを継承するという重い役目を持っている役者さんたちのためにも
歌舞伎座のデザインには、もっともっと時間をかけてじっくりと考えてほしいなあ。
そして最終的に、
役者さんたちが気持ちよく演技できるようなステキな新歌舞伎座になるなら
少しぐらい完成が延びたっていい。
私は首を長くして待ちますとも。
by nekodeko2 | 2009-01-29 00:28 | 日記
カテゴリ
以前の記事
検索
タグ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧